うつ

うつ病の原因

うつと聞くと、気分が落ち込んでいる、今まで楽しめていたことが楽しめない、疲れやすくて何に対してもやる気が起きない、集中力がない、食欲がない、眠れないといったイメージが浮かぶと思いますが、うつ=うつ病ではありません。うつというのはあくまでも状態像であって、気分障害、不安障害、強迫性障害、適応障害、発達障害、認知症、パーキンソン病、脳血管障害、甲状腺機能低下症などの様々な疾患によって生じるため、これらは「うつ症候群」と呼んでもいいと思います。ここでは気分障害の中でもうつ病について詳しく記載しますので、他の疾患については各ページをご覧になってください。

うつ病の疫学

うつ病の生涯有病率は約17%にものぼるといわれています。平均発病年齢はおおよそ40歳、約半数は20~50歳の間に発病しますが、小児や高齢者にもみられます。不安障害や強迫性障害を併発することもあります。

うつ病の原因

ノルエピネフリン、ドパミン、セロトニン、ヒスタミンといったモノアミン神経伝達物質を制御するシステムの機能失調という生物学的要因や遺伝要因(一卵性双生児の場合、気分障害の一致率は70~90%といわれています)に加え、生活上のストレス性の出来事という心理社会的要因が大きく関係します。

うつ病の診断

上記のような抑うつ気分(子どもや青年では易怒的なこともあります)、興味または喜びの喪失、疲労感、気力の減退、思考力や集中力の減退、食欲の減退(増加の場合もあります)、不眠(過眠の場合もあります)といった症状が2週間続くことで診断に至ります(これを抑うつエピソードといいます)。つまり、「先週ショックな出来事があって、5日前から気持ちが落ち込み、週末は家でずっと横になっていた。食事が喉を通らず、寝てもすぐに目が覚めてしまうので、日中は頭がボーっとして仕事に集中できない。自分はうつ病ではないか」というご相談で来院された場合、この時点ではうつ病と診断されないことになります。「自分はうつ病だと思っているのに、うつ病とは診断されなかった。医師は自分の気持ちを軽んじているのではないか」と、どうか誤解なさらないでください。

うつ病の治療

まずは心身ともに休息をしっかりとれるような環境を整えることが大切です。その上で、抗うつ薬を第一選択とした薬物療法に支持的精神療法を組み合わせていきます。認知行動療法や対人関係療法といった専門的な精神療法を行っている施設もあります。その他の治療法として、反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)や光線療法が行われることもあります。

その他の気分障害

双極性障害

気分が異常かつ持続的に高揚し、開放的または易怒的となり、自尊心の肥大、睡眠欲求の減少、多弁、注意散漫、目標のある活力や行動の増加という躁病エピソードにより診断されます。躁病エピソード前後に抑うつエピソードがみられたり、躁病やうつ病の症状が混合することもあります。躁病エピソードがみられる双極Ⅰ型障害と、躁病エピソードほど重篤な症状でなく、持続期間も短い軽躁病エピソードがみられる双極Ⅱ型障害に分類されます。治療には気分安定薬による薬物療法が必要です。

気分循環性障害

軽躁症状を伴うが軽躁病エピソードの基準を満たさず、抑うつ症状を伴うが抑うつエピソードの基準を満たさない期間が長期間持続する疾患です。治療は双極性障害に準じます。

気分変調症

抑うつエピソードの基準を満たすほどではない軽度の抑うつ症状が長期間持続する疾患です。治療はうつ病に準じます。
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